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遺言書について

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遺言書について

2025/03/06

 以下は、執筆した補助者の個人的な考えであり、司法書士本人や当事務所を代表するものではありません。

 

 業務の一つに遺言書による相続登記、というものがある。

 遺産に関して残された家族が揉めないように、生前から遺言書をしたためておく、という判断はいたって正しく故人の遺志を最大限鑑みることができる手段となる。しかし、遺書を作成したり法律に則って遺産の配分を予定している一般家庭というのは存外少ないのではないだろうか。

 

 私には夫と二人の子供がいるが現在、自分の相続に関してはこれまで大して考えたことはないし勿論遺言も書いていない。葬式代程度の生命保険と、購入して3ヶ月で早速こすった車の売却代金で私の死後の雑務は夫がまぁ良い感じに片付け、その後の人生も適当にやっていくだろう。

 

 対して夫には、貯蓄タイプと掛け捨てタイプの生命保険を掛け、突然死したときと離婚した場合の生活をそれぞれシミュレーションし私が残されたバージョンの生活については割とちゃんと考えてある。もし夫が「キャバ嬢に全財産を遺贈する』内容のトチ狂った遺言書を遺していたとしても、彼の収入は私が毎月しっかり使い切っており、生命保険は相続財産の範囲外なので無問題だ。

 

 しかし順番的に起こりうる蓋然性が高いのは、3,40代の自分たち世代の相続よりもまずは親の相続だろう。

 実家の両親はまだ元気にしているが、もし父が死ねば、母には父の財産の二分の一、私と妹には四分の一ずつの法定相続分がある。しかし相続人の意向が一致すれば遺産分割で誰か一人の名義にすることも、共有とすることも可能だ。つまり私には「実家の相続を揉めさせようと思えば揉めさせられる」権利があるのである。

 

 そこで家族間の揉め事が起こらないよう父(または母)に予め遺書を書かせておくというのは、一つの手だ。

 当然遺産はプラスのものばかりでなく、マイナスのものも残される可能性がある。故人の財産を相続しようとした場合、結論からいうと不動産の権利証や銀行通帳、証券の明細や督促の切れ端などのヒントを基に相続人が気合でそれらを見つけ出し金融機関を総当たりするファイト一発な方法を取るのが一般的なやり方ではあるが、現代はネットバンクやスマホのサブスク、各種ポイントやWeb明細しか発行されていない保険など一見しただけでは見つけられない財産も多々あり、前途のやり方では些か合理性を欠く。

 しかし遺言書にそれらの明細も併せてしたためておいてくれさえすれば、残された相続人の死後事務もグッと楽で正確なものとなるのではないか。

 

 通常、事務所に依頼者から持ち込まれる遺言書には2パターンある。

 

 一つが公正証書遺言、もう一つが自筆証書遺言だ。(厳密にはもう一つ、秘密証書遺言というものがあるが当記事では割愛する)。

 公正証書遺言とは、公証役場で公証人が立ち会い、作成される公正証書のことだ。

 公証人が遺言内容を聞き取って文書にしてくれるため、病気などで自筆が難しい場合にも有効な遺言を遺すことができるうえ、作成後、公証役場において保管されるので、紛失や偽造の心配もない。

 

 実務上、厄介なのが自筆証書遺言だ。上記公正証書遺言のデメリットに証人を頼んだり手数料等の費用がかかることがあるが、自筆証書遺言にはそれがない。ペンと紙さえあればタダで作成できる。

 

 しかし手軽に見えてこれがトラップなのだ。自筆証書遺言は、実はその要件が厳格で、その全文、日付、氏名を自書せねばならずワードやエクセルでの作成は認められず(目録の作成は可能である)、押印も必要である。

 

 そして素人がDIYした自筆証書遺言は往々にして、不動産の所在が登記簿と一致しないものだったり、地積が違ったり、6なのか0なのか判断に迷う筆跡だったりするものが多く、司法書士泣かせなものが多々あるのが実務の現実だ。

 

 更に、大切なのが遺言書を見つけたからといってすぐに開封してはいけない。親の遺言書を見つけて「開けちゃだめ」というのはゲームなら完全に初回殺しではないか。ゲームならセーブポイントからやり直せばよいだけだが、現実ではそうはいかない。

 

 自筆証書遺言は裁判所に提出し検認してもらわねばその効力を発揮しないのである。遺言があるから裁判所に持っていけという遺言を重ねてしておかねばならないのは一体何の伝言ゲームであろうか。

 

 最近では、自筆証書遺言の保管制度という、遺言者の作成した自筆証書遺言を法務局(遺言書保管所)で保管してもらう制度がスタートしたので、こういった方法を活用するのもよいかもしれない。

 

 しかし元気なうちから親に「遺言を書け」とは実際なかなか言い出しづらく、これまで実家の金回りに大して頓着してこなかった娘がそれを突然言い出せば別のヤル気を感じて警戒されてしまうかもしれないし、「まだ俺が元気なうちから相続を気にするその根性が気に入らねぇ」と逆に遺産の配分を減らされてしまうかもしれない。

 

 結局は、遺族間にしこりを残さないためには、普段から積極的に意思疎通を図りコミュニケ―ションを大切にしておくというのが一番よい相続対策となるのではないだろうか。

 

※おかがき法務事務所では遺言書の相談も承っています。

 相談は初回無料ですので、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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